第5章 こひくれない
長い夜が明けたと言うのに、まだ俺は闇の中に居るようだった。
目が眩む。
スマホを手にとって、何度も掛けてみようと思った。
でもだめだった。
震える手で画面を何度も押して、でも諦めて。
どれだけ時が経っただろう。
リビングの片隅で震えていたら、誰か訪ねてきた。
ふらふらしながら立ち上がって確認する。
信じられなかった。
そこに立っていたのは潤だった。
「どうして…」
玄関のドアを開けて、そこに立っているのが潤だとわかってもまだ信じられなかった。
「入れてくれる?」
目の下には隈ができていて、やはり潤も眠れなかったのだと悟った。
動けないでいると、潤がドアをこじ開けて入ってきた。
「上がるね」
靴を脱いで潤は中に入っていった。
なにが起こっているのかわからないまま、俺も後を追った。
潤はリビングで背中を向けて立っていた。
「…なにか…食べた?」
「…え?」
「あれから、なにか食べたの?」
「いや…」
なんでこんな時に…
俺を罵倒しにきたんじゃないのか。
俺を殴りに来たんじゃないのか。
潤は俺を見ないまま、キッチンに入っていった。
暫くすると、非常食にとっておいたおかゆを温めて持ってきた。
「とりあえず…食べて…」