第5章 こひくれない
「待って…翔くんっ…」
「なんだよ…俺にはどうにもならないって言ってるだろうが…」
「翔くん…」
泣きそうな顔で俺を見るな
「お前がすることに反対はしない。けど、今の時期じゃ賛成はできない」
「翔くんっ…」
「じゃあな。ごちそうさん」
上着を着て荷物を掴んだ。
「待って…お願い…」
俺の腕をつかむ力は、強かった。
…そんなに必死なのか…
そんなに必死に彼女を愛しているのか
「お願い…翔くん…」
ぽたりと床に涙がこぼれ落ちた。
「翔くんにしか…こんなこと言えないよ…」
それが俺を…どれだけ今まで追い詰めたと思ってる。
「なんで俺なんだよ…」
なんでお前は…
「翔くん…」
凶暴な風が、俺の中を吹き荒んでいた。
「離せ」
このままだと、こいつをどうにかしてしまう。
早くこの家をでないと。
「早く…離せ…」
俺をつかむ腕を引き剥がそうとした。
潤の手を握ると、熱かった。
その熱が、俺の意識をふっ飛ばした。
「翔くん…?」
手を掴んだままの俺を潤んだ目で見る潤を、その場で押し倒した。
「えっ…翔くん!?」
お前は
これ以上俺を傷つけるのか