第5章 こひくれない
潤は一体なんのつもりでこんなことしてんだろう…
わからなかったが、今日は俺に帰って欲しくないらしい。
「…しょうがねえな…」
ワイングラスを手にとって、一気に流し込んだ。
暫くするとキッチンからいい匂いが漂ってきた。
昼からぶっ通しで芝居を見ていたせいで、腹はペコペコで。
ダイニングテーブルに潤がパスタを用意してくれたときには、酒もいい具合に回っていた。
「翔くんできたよー」
「ああ…」
立ち上がってあるき出そうとしたら、足が縺れて転びそうになった。
潤が手を伸ばして俺の腕を取った。
「あぶないよ…」
「ああ…すまん…」
熱っぽい目が俺を見ていた。
まっすぐ見ていられなくて逸らすと、潤は微笑んだ気がした。
「さ、すぐ食べようよ…」
そう言ってるのに、潤は俺の腕を離さない。
とくんと心臓が鳴った。
「潤…?」
ぎゅっと手に力が入る。
「…もう大丈夫だから…」
「うん…」
血が逆流しそうだった。
「冷めちゃうね…」
潤が離れていくと、やっと息を吐けた。
パスタは、魚介のパスタだった。
予め用意してたのか、なんだか豪勢なパスタだった。
「これ、どうしたの?」