第5章 こひくれない
ヴィオレッタは、娼婦で…
欧米では娼婦は忌み嫌われる職業で、そんな女がまっとうな恋をして叶うはずがなかった。
だけど彼女は出会ってしまったのだ。
運命の相手に…
周囲からの反対、自分のやってきたこと。
すべてが障壁になって、二人の間を引き裂く。
そして命を燃やして、散り際。
最愛の男を手に入れて彼女は天に還っていく。
潤は…
なぜこの芝居に俺を誘ったんだ?
しかもあんな形で…
「翔くん、お酒飲む…?」
ぼけっとしていたら潤がソファの後ろに立っていた。
「飲んだら帰れなくなんだろ?」
「でも、明日もオフだよね?」
「そうだけど…お前大丈夫なのかよ?」
「俺は…大丈夫。福岡の分は東京のときにだいぶ詰めたし」
「いや、でも…」
ドンっとソファの前のローテーブルにワインのボトルを置かれた。
「今日は…泊まっていって欲しい」
「え…?」
「だから、飲んで?」
グラスを置くと、潤はまたキッチンに戻っていった。
ワインのボトルはもう栓が開けられていて…
「最初から飲ますつもりだったんじゃないか…」
ボトルを手にとってグラスにワインを注いだ。
燃えるような赤だった。