第4章 エバーグリーン
音楽なんてなんだっていい。
ただ、音を遮断すれば。
そう思ってプレイヤーには雑多に音楽を詰め込んである。
それを聞きながら台本の世界に没頭していたら、肩を叩かれた。
「あ?」
顔をあげるとあいつが居た。
「…なに?」
「打ち合わせ、始まるってよ」
いつもは隣りにいるくせに…そこはいつもと違うくせに。
笑顔だけは変わらなかった。
でも俺にはわかってる。
声は、違う。
頑なな声。
なにかを隠してる声。
「ありがと」
台本をテーブルにおいて身体を起こすと手を差し伸べてくれた。
無言でその手を握ると、引っ張り上げて立たせてくれた。
そのまま何も言わず手を離していく。
…なんで?
とか…
どうして?
とか…
もう心のなかで何度繰り返したかわからない。
でも俺にはわからなかった。
なんで…相葉さんが俺から離れていったのか。
俺を避けるようになってしまったのか。
あんなに近くに居たのに。
だけど俺を惑わせてるのは…それだけじゃなく。
こんなに物理的に距離を置かれてるのに、あの視線だけは。
以前となにも変わっては居ないってことだった。
それが何を意味しているのか、俺には全くわからなかった。