第4章 エバーグリーン
「おはよー」
「おはようございまーす」
レギュラーの収録日。
もう年内最後の収録だ。
これが来年一発目の放送となる。
新年が明けた体で収録を行わないといけないから、なかなか大変なものがある。
だってね、俺たち紅白出たりとかしてるからね…
色々と気を使うんだよ。
いつも通りの楽屋だけど、いつもとは違う。
俺の隣りに座っているはずのあいつが居ない。
皆、気を使って俺の隣には座らないでいるけど、ここ半年席は空いたままだった。
仕方ないから最近じゃ、そこに寝そべってゲームをしている。
今日は来年から撮影に入る映画の仮本が上がってきてたから、それに目を通してた。
「おはよー」
いつも隣に座るはずのあいつが楽屋に入ってきた。
声が…今日は暗いな。
疲れてるのかな。
でも俺は顔を上げられない。
そのままその声の主は、ソファセットを通り過ぎて楽屋の奥のミーティングテーブルの方へ行ってしまう。
ちらりと見ると、一層痩せたなと思う顎のラインが見えた。
マネージャーとなにやら話し込んでる。
…でも俺には関係のないこと。
また台本に目を戻すと、イヤホンを耳に挿して音を遮断する。