第3章 萌葱-moegi- scene2
上着のポケットからイヤホンを取り出してスマホに挿すと、俺に差し出してきた。
「ちょっと聞いてみて」
イヤホンから翔くんと雅紀の声が聞こえてきた。
『だからさ、意地張っててもしょうがねえだろ?』
『意地なんか張ってないよ』
『これ以上一緒にいたって、俺のこと思い出して嫌になんだろう?』
『別に…俺、知ってたし』
『へえ…智が言ったんだ?俺にヤられたって』
『翔ちゃんにとは言わなかったけど…でも言ってくれたし』
『どこまでお人好しなんだよ』
『お人好しじゃないよ』
『俺だって言わなかったってことは、そういうことだろ?』
『え?どういうこと?』
『俺のこと雅紀に隠しておきたかったってことだろ?』
『それは、嵐のこと考えてたんだと思うよ』
雅紀…ちゃんとわかってくれてたんだ…
『…智は俺のこと忘れてないからな』
『そりゃ、忘れらんないだろうね』
『一生、忘れらんねえぞ?そんなの耐えられんの?』
『…俺は、リーダーが側に居てくれるだけでいいから』
『綺麗事だな』
『もういい?話しても無駄だから』
そこで会話が終わった。
潤を見たら、再生を止めた。
「…やっぱ別れろって脅してるみたいだね…」