第3章 萌葱-moegi- scene2
その時、会議室をノックする音が聞こえた。
「ねー!何してんの!?ちょっとここ開けてっ!」
聞こえてきたのは潤の声だった。
あいつは舌打ちするとすぐに立ち上がってドアを開けた。
「翔くん…?なんでここに…」
訝しがる潤を突き飛ばして、あいつは会議室を出ていった。
「リーダー!」
床に蹲る俺を見つけた潤は駆け寄ってきた。
「大丈夫!?まさか…」
「なんでもない…」
「なんでもないって…これがなんでもないわけ無いだろ!?」
潤が上着を脱いで掛けてくれた。
「何されたの?翔くんに…」
「なんでもないっ…なんでもないからっ…」
身体が震えるのを止められない。
恐怖で停止してしまった頭は、潤になんと言っていいかの答えを出してくれなかった。
「誰にも言わないで…」
「リーダー…」
「お願い…誰にも言わないで…」
それからマネージャーが戻ってきて、この惨状に声も出ないようだった。
「今日、リーダーの仕事は?」
「あ…ここで、終了です」
「まだなんか残ってる?」
「いえ…後は、打ち合わせだけでしたから…」
「じゃあ、俺、送っていくから。いいでしょ?リーダー」
何も考えることができなくて、そのまま俺は頷いた。