第3章 萌葱-moegi- scene2
「え…?なんで…?」
「だから…暫くは家に帰れないから…」
それから一週間ほどしたある日、雅紀の家に遊びに来たら、急にそんなことを言われた。
「どうして…?そんなに忙しいの?」
「ん…まあね。だから、暫く智は自分のお家に帰っててね」
「うん…」
暫く渋谷に取ったホテルに缶詰になるんだって。
司会の仕事が山場になってて、家に帰る時間も惜しいんだって言ってた。
なんだか…急に突き放された気がした。
「鍵…返したほうがいい…?」
「何いってんの?智」
「だって…」
「いいから。また帰って来られるようになったら、遊びに来てくれればいいから、ね?」
「うん…」
今は…12月だから…忙しいから…
そう思ってもなんだか納得できない何かが俺の中に残った。
でも雅紀がああ言っている以上、待ってるしかない。
そう思って、なんとか心を落ち着かせた。
そんなある日…
渋谷の本社に仕事があったから、マネージャに連れられていった。
本社ビルはほんとにでっかくて。
今は事務所のものじゃないんだけど、そのうち土地建物も全部事務所のものにしたいらしい。
そんなことをマネージャーが言ってるのを聞きながら、会議室に入った。