第3章 萌葱-moegi- scene2
まだ早かったから、近所でショットバーを探して入った。
カウンターに目立たないように座って、バーテンに強めの酒を頼む。
「スティンガーでございます」
ウイスキーグラスに入った少しだけ琥珀色の酒。
くいっと飲んでみると、ブランデーの味とペパーミントの爽やかな香りがした。
「んまい…」
バーテンはにっこり笑ってグラスを磨いている。
ウイスキーグラスに入ってる氷をカラカラと鳴らしながら飲んでいると、隣に誰か座った。
「ニノ…!」
「どうしたのよ…珍しい」
「お前こそ…なんで引きこもってねえの?」
「今日はちょっとね…」
なんて後ろのボックス席をちらっと見た。
そこには勝村さんとか高橋さんとかが居て、ぐでぐでになってた。
「あー…」
「もう飽きちゃったよ」
「そっか」
「あんた、どうしたのよ?一人?」
「ん…まあ…」
まだ…みんなにはちゃんと雅紀と付き合ってることは言ってない。
誰にも秘密にしてる。
だから…なんでここで飲んでるのか聞かれて、上手く答えられなかった。
「あ…もしかして、これ?」
ぴっとニノは小指を立てた。
「違うわい…」
本当は親指だ。
「ふうん…?」