第12章 昇格試験
「なっ…おい! 待て! ここから出せ!!!」
自分の身に一体何が起こったのか、ファンドレイは一瞬にして悟る。
昇格試験に自分を出させないための妨害行為。
そんなことをする犯人はおそらく――。
「本気かよ……」
柔和な笑みでジョエルをエスコートしていた男の顔が思い浮かぶ。
まさかこんなことをするなんて。
ジョエルにとってファンドレイは唯一の恋人だが、シドリアンにしてみれば突然現れた間男にしか思えないのだろう。
「くそっ…」
今日は騎士団の任務についているわけではないので帯刀していない。
頑丈な作りのこの馬車を内側からぶち破るのは相当難しい。
それでも、簡単に諦めるわけにはいかない。
狭い車内の中では勢いよく扉に体当たりすることもできなくて、ファンドレイはただひたすらに鍵の辺りを蹴り続ける。
蹴る度にほんの少し外の光が差すのだが、ガチャンガチャンと外側で鍵が跳ねるだけに留まった。
試験の開始を知らせるファンファーレが微かに聞こえてきて、ファンドレイは慌てた。
このままでは、本当に不味い。
「くっそ…こっから出せ!!」
ガン!と拳で殴りつける。
ジンジンとした痛みにファンドレイが盛大な舌打ちをした、そのときだった。
突然、ピタリと馬車が止まった。
「何だ? 何が起きて――うおおっ?!」
外が騒がしい。
扉に張り付いて音を拾おうとしていたファンドレイは、いきなり解錠されたことによって馬車から転がり落ちた。
「大丈夫ですか?」
目の前に現れたのは、あの美しい青い瞳――。