第1章 そんな出会いだった
(あら…?)
ドキドキする。
もう落ち着いたはずなのに、どうしてだろう。
椅子に座ったまま、ジョエルは騎士団の正装である真っ白な装いの男を探したが、見える範囲には彼の姿はなかった。
しばらくして、いくつかの新しい靴がジョエルの前に並べられた。
いらないのに、と思いながらもわざわざ用意してくれたことを思えば受け取らないわけにはいかない。
ジョエルはそれぞれに足を差し込み、今日のドレスに一番合いそうな靴を選んだ。
今選ばなかったものも、大切にしますわ、と言って侍女に受け取らせる。
怪我はしていなかったものの、ダンスの誘いは断ることにした。
入れ替わり立ち替わりやってくる貴公子たちの話に相槌を打ちながら、ジョエルはこのパーティーが早く終わることをひたすらに願っていた。