第5章 売られた喧嘩
指と指を絡ませて握り合い、ジョエルのもう片方の手はファンドレイの背中を必死に掴んでいた。
彼の方もジョエルの細い腰に腕を巻きつけ、彼女の体を離すまいとキツく抱きしめてくれた。
「…っはぁ…はぁ…」
「…はっ…」
ジョエルはすっかり夢中になっていた。
もっと、もっとと欲しくなる。
ファンドレイの唇が離れて、ジョエルはやめないで…とばかりに彼に縋り付いた。
次に彼が口付けたのは、濡れた唇ではなく首筋であった。
「ひゃっ!」
左側の首筋をぞろりと舐めあげ、耳たぶをかぷりと甘噛みされる。
「あ、や、ぁん…っ」
くすぐったくて、腰の辺りがソワソワしてくる。
耳たぶの付け根をぴちゃぴちゃとわざと音を立てて舐められて、ジョエルはぷるぷると体を震わせた。
横抱きになっていた体の向きを変えられて、後ろから抱きしめられるような体勢になると、ファンドレイの顔が見られなくなってしまった。
手のひらを合わせて絡めていた指も離れて、ただ腰に回された腕と項に這う唇、そこから漏れる熱い吐息でしか彼を感じられない。
寂しくなったジョエルは後ろを振り向こうとして、ドレスが肩から落ちる感覚に見舞われた。
「えっ……あっ…!」
ドレスの背中は編み上げになっていて、紐を解けば肩からすぐにずり落ちる。
下着代わりのコルセットが丸見えの状態になり、ジョエルは慌てた。
(だ、ダメですわ…! これ以上はダメ…あぁ、どうしたら…?!)
コルセットはお腹周りの締め付け部は固い生地なのだが、胸の部分は柔らかな布地だけが重ねられている。
つまり、コルセットを取り去らなくても、胸の部分だけはめくることができてしまうのだ。
(なんて無防備な下着なのかしら?!)
ジョエルは知らなかった。
胸の部分だけそんな風になっているのは、男性に押し付けたときに柔らかさを感じさせるため、そして今のようにコルセットを外さなくても男女の営みができるようにするため…という噂があることを。
そして今まさに、ファンドレイの手がジョエルの胸に迫ろうとしていた。