第17章 恋は盲目
公爵家令嬢ジョエル・スブレイズと男爵家子息の身分違いの婚約は瞬く間に貴族間での一大トップニュースになった。
ジョエルの婚約者はシドリアン・パルマンティエだと殆どの者が思っていたし、しかもジョエルの婚約発表の2日後にはシドリアンとプレイラの婚約が発表されたのだから、皆こぞって話題に取り上げた。
長らくジョエルに懸想していたシドリアンの突然の心変わりに、一体何があったのかと興味津々なのだ。
渦中の人物であるジョエル自身、その辺りが一体どうなっているのかわかっていなかった。
しかしとにかく、プレイラには一度謝らなくてはならない。
ずっとプレイラはシドリアンのことが好きだったのだ。
それなのにジョエルはそんなこと知りもしないで、シドリアンとの婚約をハッキリと断らずに逃げてばかりいた。
プレイラは一体どんな気持ちでいたのか。
(知らなかったとはいえ、あたくしは……。プレイラに頼ってばかりだわ)
会って謝りたいと思うジョエルであったが、ジョエルもプレイラも結婚への準備に向けてのあれこれがあり、互いの予定を合わせることができない。
気づけばあっという間に1ヶ月が過ぎてしまった。
もちろん、その間も通常通り王宮の図書館へ通いファンドレイとの仲を深めていた。
以前のようにこそこそする必要がなくなったのもあり、ジョエルは堂々と婚約者に会いに行けるようになっていた。
その日、ジョエルはすっきりとした鎖骨が見える、胸元が開いたドレスを選んだ。
図書館へ行く日だからである。
婚約したあの日から、ファンドレイに会うときは少し露出の多いものを着るようにしているのだ。
何故かたまにマールがこれは駄目だと言って首元の詰まったドレスを出してくるときがあるので、不思議に思うこともある。
一体どういう基準で選んでいるのかはわからないが、彼女なりの理由があるのだろう。