第1章 【ヴィク主】僕がコーチでコーチが僕で?
それは、憧れのヴィクトルに襲われているのだという事実に頭を思い切り殴られたのもそうだし。
ヴィクトルが無遠慮に僕自身に指を這わせているのもそうだ。
快楽に直結している部分を扱かれ、胸を甘やかされ、正常でいろという方が無理だ。
「あっ、あっ、あっ、やだ、びくとる、やだぁっ!」
「トールはかわいいね」
「かわいくないっ、ないからぁっ!やめて、びくとる、やだ」
「やだばっかり言われると、なんか俺が強姦してるみたいだよね?俺の指は気持よくない?」
気持いいか気持よくないかなんて、触れながら眼前に陣取っているヴィクトルならよく分かっているはずなのに。
わざと聞いてくる所、腹が立つ。
しかも強姦してるみたい、だって?
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!
みたいじゃない、こんなの強姦と一緒じゃないか。
僕はヴィクトルにしてほしいなんて言ってないし、合意した覚えはない。
立派な犯罪だ。
ひどい、ひどい、ひどい。
こんなのってない。
「一回イッちゃおうか、トール」
ぞわり、と体の真ん中が冷える。
イッちゃう?
その意味が上手く受け取れず、僕は反応が遅れる。
「んッあああ!?」
それまでの誘惑するような動きとは打って変わって、ヴィクトルは追い詰めるように動きを速める。
先走りで濡れた中心が、ぐちょぐちょと卑猥な音をたてるくらいに激しく扱かれ、頭がスパークする。
やめて、やめてと声をあげることも出来なくなって、僕は意味不明な音ばかりを並べた。
ヴィクトルの服をつかんで睨みつけることで静止を訴えたが、ヴィクトルは微笑み、あやすように髪へキスを贈ってくる。
「大丈夫だ。恐くないよ、トール」
「ふっ、や、あああっ、びくとる、びくとる」
抵抗しようと頭は指示を送っているはずなのに、体は快楽に正直だ。
もっと気持ちよくなりたくて、僕の腰は自然に揺れる。
「ふぁあああっ!?」
高められた性感がはじけて、頭が真っ白になる。
チカチカする視界。
勝手に跳ねる体。
内側から放出される快感を、欲望のままに拡散させては、自分が自分ではなくなってしまう気がして、僕は体を折り曲げてたえる。
快楽の波が通り過ぎるのを。
僕自身から吹き出した白濁で、ヴィクトルの綺麗な指が汚されている。
彼はその指を唇に寄せて、真っ赤な舌でそれを舐めとった。
「なに、して…………」
