第1章 【ヴィク主】僕がコーチでコーチが僕で?
服の中に入り込んでいる不埒な腕をつかんで引きずり出し、強くヴィクトルを睨みつける。
真っ赤になって息を荒らげる僕の怒号では、どこまで効果があるか分からないが、このまま流されてしまうわけにはいかない。
ヴィクトルは目を丸くし、何度か瞬きを繰り返した後、またあのあやしい笑顔で僕に接近する。
「ふふ、そうだね。俺は君の生徒だ。だから、徹。俺に教えて」
「なに、を……」
「どうやったら、徹が気持よくなるのか」
かっと顔が熱くなる。
後退しようにも壁が阻んで、これ以上は逃げられない。
眼前のターコイズが好奇心にきらめいて、僕が陥落するのを待っている。
コーチだから、と引き合いに出すだけあって、僕の指示なしでは本格的に動くことはないようだ。
ただ、下半身をまさぐる手は無遠慮に秘所をかすめていって、気が気ではない。
下がれないと分かっているのに、なんとか逃げようとバタつく脚をおさえながら、ヴィクトルはより腕を深くまで差し入れてくる。
下肢に触れるだけだった彼の腕が、ふいに上半身へ伸び、するりと胸を撫でた。
ヴィクトルの指がほんの少し触れただけだというのに、そういう雰囲気にのまれた僕は大袈裟に反応してしまう。
反射的にヴィクトルの腕を掴んだが、彼は僕の反応により好奇心がきらめいたらしく、そこをくすぐるように何度も指を動かした。
「あっ、ひぁ、まって、やめっ」
「くすぐったい?」
「くすぐったいっ……からっ、やっ」
くるくると乳輪をなぞり、先端を少し強めに擦る。
それだけなのに、僕の体はいやにビクついて止まらない。
ヴィクトルに触れられている。
それだけで歓喜に胸は震えるというのに、物理的な刺激で頭はより酩酊していく。
「ひぁんっ」
ヴィクトルがぎゅう、と強く胸の飾りをつまみ、もてあそぶように強弱をつけてこねる。
腰にじわりと熱が広がり、僕はすがるようにヴィクトルの服をつかんだ。
「ヴィクトルっ……!」
「ん?トールはココ、好きなんだね」
「あっ、あぅ、もうやめ……ッ」
「ん〜、こんなになってたら、今やめちゃうほうが辛いと思うよ?」
ほら、とヴィクトルに促されて下肢を見れば、上向いて涙を溢す自身があった。
ヴィクトルにワイシャツをたくしあげられ、見せつけられる自分の現状に、僕は喘ぐことしかできない。
