第7章 騎士
~フェデルタ~
「分かりました。私は部屋で休みますので
一緒に来ていただけますか?」
「はい!」
(良かった拒否されたら如何しようかと思った)
満面の笑みを向けると
クスクスと笑われてしまった
「ここがゼノ様から与えられた部屋です。
どうぞお入り下さい」
「し、失礼します」
緊張のあまりに同じ側の手と足が出てしまった
「そんなに緊張しなくてもいいのに...
お茶でも飲む?」
「いえ!警護中ですので」
(あの時守れなかったが今度はしっかり守らなくては)
「ここはクロッシュとは違う、シュタインは安全だよ
それにデジールも兄...ゼノ様も今はいないんだよ?」
先ほどまでの萩の笑顔が曇る
(今デジールと言った?それに兄と...
まあいいか、サクラ様には笑顔でいてほしい)
「分かりました。いただきます」
パッと笑顔になり急いで準備に取りかかる
「どうぞ、熱いから気をつけてねフェデルタ」
「はい.....えっ!?」
(えっ!?い..いま..俺の名前を呼んだ?)
「あの...俺は名前を貴女に名乗りましたか?」
「あっ!?」
萩を見るとしまったと言う顔をしている
「え..ええ確かデジール様が貴方の事を名前で呼んでいましたよ」
目を泳がせながら答えた
「嘘ですね。デジールは俺の事を今まで一度も名前で呼んだ事は無い」
「えっ!?そうなの?デジールは騎士団長の名前も知らないの?
そんなのでよく父様の代わりが出来るわね!国民が可哀想だわ」
怒りを露わにしている萩の手を掴み引き寄せ
思いっきり抱きしめる
「わっ!ちょっと待ってフェデルタ」
トントンと胸を叩かれて少し体を離し顔を見つめる
「瞳の色が違う...でも貴女は萩様ですね?」
萩は観念したように頷くと腕から離れ
瞳に入れていたコンタクトを外す
エスポワ-ルの血筋にしか現れない特殊な色、深い緑の瞳がある
「萩様やはり生きていたんですね
4年前のあの日、俺は別の仕事で一緒に行けなかった
火事があったと聞き急いで駆け付けたが王の遺体しか見つからなかった
王妃と王女が亡くなったと聞いても
きっと何処かで生きていると信じていた。
だから俺はデジールに従っているふりをしてクロッシュを守る事にした」