第1章 迷い込んだ宿命
何がなんだか分からない。恐らく年下であろう男の子達に手を引かれ私は全力で走っていた。(ちなみに手に持っていた包丁は危ないからと捨てられた。)
足が縺れそうになりながらも必死で走り続けながらふと思う。
──この男の子達は何者なんだろう。
化け物と私を見て驚いた顔はしたものの、その実反応は冷静だった。未だ追い掛けてくる化け物達に辟易したのか「古寺はその人連れて先行け!」と髪色の明るい男の子が叫ぶ。コデラと呼ばれた眼鏡を掛けた男の子が何か言いたげな表情をしているのに気付いたのか叫んだ勢いのまま続ける。
「市民の救助が優先だろ! それにスナイパーのお前じゃ分が悪い! 行け!」
「……古寺了解!」
こっちです、と私の手首を掴み生真面目そうな男の子が誘導する。思わず後ろを振り向いて残った男の子二人を見やれば先程までの制服姿とは変わった服装をしていた。
「な……」
にあれ、と走りながら呟いて余所見すると危険ですと怒られてしまった為前を向いてただひたすらに走る。
茶髪の男の子の両手から浮かぶ無数の緑色した発光体、カチューシャで前髪を纏めた男の子が手に持つ槍。まさか、あれで化け物と戦うのだろうか。
やはり、この世界は私が居た世界と違う。私の知った世界にあんな化け物はいなかった。やっぱり、私は何処か知らない、別の日本に来てしまったのだとこの時になって漸く実感した。