第2章 出逢い
わたしはなぜここに居るのか、この人は誰なのか、何も分からない。過去の記憶さえもない。
覚えてるのは、あの夢だけ…。
だから、どうして良いのかも分からずただ俯くことしか出来なかった。
「…は?何が起こってんだ?
何でこんな所にこんなちっちゃい女が居んだよ。」
「…ちっちゃい女…?
あのっ、あなたは一体誰…?わたしは何者なのでしょうか…?」
顔を上げて問いかけてみるけれど、男の人はほんの一瞬困ったような顔をした。
「俺は、八乙女 楽だ。
あるとき、道端で転んでた婆さんを起こしたんだ。そしたら、“幸せが必ず訪れる種”と言って、見た目は普通の種を貰った。
すぐに植えるように言われて、俺はその種を育てた。ようやく花が咲いたと思ったらその花にお前が座ってたって訳だ…。」
「幸せ…。」
わたしはそう呟いて静かにまぶたを下ろして、いつか見た夢を思い出した。
『—お前に幸せを与えてやろう。』
そう言ったおばあさんの笑顔…そして、ふわりとわたしを包み込む魔法の光…。