第6章 一番強いのはぼくだよ!!
見事に大富豪となった十四松は、ゆめ美がお土産でくれたカステラを食べながら観戦中。
次の開始は十四松の次であるトド松だ。
(くそぅ!十四松兄さんにしてやられた!温存しないで2を出しておけばよかった!残されたボクの手札はハートの3、ハートとダイヤの4、スペードの5、スペードとクローバーの2…。どうする?ここは様子見でスペードの5を出してイレブンバックにかけるか?もしイレブンバックにならなくても、ボクには切り札の2が二枚もある!現時点で、この六人で最強の手札を持ってるのはボクだ!大丈夫だよトッティ。落ち着いて…ユメに一番お似合いなのはボクなんだから!)
すぅっと深呼吸してから、トド松はスペードの5をちゃぶ台に置いた。
何か策があるのか、ゆめ美とおそ松はパスをする。
「フン…安パーイ」
ここへ来て、カラ松は不安要素だったハートの6を場に出せた。
「よかったぁ…」
チョロ松もクラブの10を出せて安堵の表情を浮かべる。弱いカードは出せる時出すに越したことはない。
一方、苛立ちを隠せないのは一松だ。
「……パス」
「あー、これは、へー、ふーーん」
一松の手札を後ろから盗み見する十四松。
「言うなよ…十四松」
「クソ弱いね!ぼくでも分かる!」
「おいっ!?だから言うなって!!」
「十四松兄さん、ゲームの流れを中断しちゃダメだよ。ボクもパス」
パスしつつも、二枚の2を温存しているトド松は余裕綽々である。
「うーん、ちょっとだけ勝負!えいっ」
次のゆめ美が置いたのはハートのQ。
「どうかな?だめ?」
首を傾げ、不安げに五人の目を順番に見つめると、全員目を伏せた。
「あれ?もしかして誰もいない?」
(だ…出せねーーーーーッ!!!!)
「オールパスですッッ!!」
五人は声を揃えて返事をした。
打ち合わせ無しの接待トランプである。
賭け事をしているというのに、彼等の瞳は一点の曇りも無かった。
——だが、この些細な出来事が勝負の流れを大きく変えることとなる。