第6章 一番強いのはぼくだよ!!
チョロ松はトランプを丹念に切っている。
兄弟達を見れば、ヘラヘラ浮かれながらゆめ美とお菓子をつつき歓談中。
(ったく、いつも僕がこーゆー役なんだから…)
「チョロ松くん切るの早い!すごいね」
「そ!!そうかな…!アッハハハハ…!」
(んーーー!!褒められたぁーーーッ!!)
チョロ松が心からトランプを切っててよかったと思い直した横でゆめ美が立ち上がる。
「ちょっとトイレ借りるね」
「う、うん、いってらっしゃい」
襖が閉まり、女子特有の甘い残り香がふわりと漂うと、六人はすかさずタッティを押さえた。
というか、ゆめ美が来てからずっとタッティだった。
「みんないい加減慣れたら?一緒にいるだけで下半身がこんにちはとか笑えないよ。引かれちゃうって」
「うっわ出たー。何自分のこと棚に上げてんのライジングチンコ兄さん」
「ライジングチンコって誰だ!!」
「タッティの言う通りだぞライジングチンコ。俺達は同じ穴のチンコだろ」
「きったねぇなぁおいっ!!夢も何もあったもんじゃねぇぇえ!!」
ゆめ美がいなくなった途端これである。
「え…夢って何?こいつ何言っちゃってんの?」
「ゆ、夢は夢だよ!ってあれ?夢って何のことだろう…?」
ギリギリメタ発言を回避するチンコ達。
「ブラザー、こんな時に言い争いをしている場合ではないぞ。忘れたのか?あの夜の誓いを…」
「誓いってゆーか約束でしょ!いちいちイタくしないで。勿論覚えてるよね?兄さん達?」
トド松が全員の顔を見回すと、兄達はこくりと頷いた。
「…切り終わったよ。ほら、配るからみんな座って」
さっきまでのだらけた空気が一変し、ピリピリと緊張が走る。
羊を数えた昨晩、六つ子はある賭けをした。
それは、十回勝負のうち、大富豪になった回数が一番多い人が、ゆめ美を家までお見送りする特権を与えられるというものだ。
もしゆめ美が一位の場合は二位になった人が該当する。そして、大貧民になった場合は減点だ。
当然のことながらゆめ美にこのルールは知らされていない。