第29章 ※トド松エンド 人を好きになるって
互いを真っ直ぐ見つめるゆめ美とトド松。
すれ違い、傷つけ合ってもこうしてまた惹かれ合うのはきっと——
「ユメ」
「トッティ」
少し照れくさそうにあだ名で呼び合い微笑み合う。それだけで満たされるふたつの心。
一方、愛の目撃者となった兄達は動揺を隠せない。ダッシュで木陰に隠れると、木から縦一列に顔を出して二人を見守る。見守る、というか監視なのだが。
(てか僕らここにいる意味ある!?)
(ないね!邪魔でしかない!)
キッパリ悲しき台詞を口にする十四松。
そんな松達をそっちのけで見つめ合っていた二人だが、ついにトド松が行動を起こした。ゆめ美へと歩み寄ると、そっと首の後ろに手を回す。動揺し、肩を揺らしたゆめ美の耳元に口を寄せ、低い声で囁いた。
「ジッとしてて」
唐突なラブシーン突入に、木の陰から覗いていた四人は目を見張る。
(マジかよ!!あの二人ついにおっぱじめちゃったよ!?)
(おおお落ち着いて!まだ二人がそういう仲だと決まったわけじゃなぶしっ!!)
(このタイミングでなぜ転ぶんだチョロ松!?)
(鼻緒が…そして鼻血が…ゆめ美ちゃぁぁぁあん!!!!)
(いってぇなシコ松!蹴んじゃねぇ!)
(あいっ、あいっ、あいっ)
(地面に頭を打ち付けるんじゃない十四まーーつ!!)
外野松は甘い雰囲気の二人が死ぬほど羨ましくて木陰でのたうちまわる。けれどもせっかくの末弟エンドをぶち壊したら、見えない何かに存在を消される気がして妨害するのすら出来ない。
それならば、と四人は末っ子に"キスしたらぶっ殺す"——と念を送り始めた。すると、トド松は直ぐさまゆめ美から一歩下がった。
(ぃよしっ!離れた!)
おそ松は小さくガッツポーズ。
四人の念が通じたのかと思ったが、それは勘違いだった。
「思った通り。とっても似合ってる」
優しさを込めた笑顔で、トド松。
「トッティ、これ…」
ゆめ美の胸元には、小さな淡いピンクゴールドの花が。
「ずっと渡したかったんだ。けどなかなかタイミングなくてさ」