第28章 トド松ルート2 バカになるのが恋ザンス
「らっしゃーい」
暖簾をくぐれば、聞き馴染みのある声。
「やっほ、チビ太」
軽く会釈をして着席。
混んでいない時間帯を狙ったものの、既に先客があった。
「ヒック……なんザンス?おそ松ザンスか?」
「そうでーす」
「嘘つけバーロー。おめーはトド松だろーが」
面倒だから適当を言ったが、チビ太には見事言い当てられてしまう。
「せーかーい。さすがチビ太ー」
というか、長い付き合いなのにも関わらず、相変わらず見分けがつけられないイヤミに内心呆れ果てるトド松であった。
「ケケッ、褒めても何にも出ねーぞ。ほらよっ」
「ありがと」
グラスとビールを受け取ると、トド松は手酌で飲み始める。
「にしてもおめーが一人でうちに来るなんて珍しいじゃねーか。なんかあったのか?」
ぼんやりとビールの泡を見つめていたトド松だが、
「うん…まぁね」
ため息を隠すようにビールをグイッと飲み干した。