第27章 トド松ルート1 blinded
キョトンとする姪っ子にあたたかな言葉が降り注ぐ。
「真っ直ぐ思いをぶつけたらいいんじゃないかな?恋愛は駆け引きだなんだ言うけど、結局一番大切なのは相手を思いやる心、誠意だと私は思ってるからね。そして、六つ子くん達は本質的にそういう心を持っていると思うんだ」
「本当に…そう思う?」
泣き出しそうなゆめ美の頭を、再び大きな手が優しく撫でた。
「ああ。私だって伊達に客商売何十年もやってないさ。毎日いろんな顔を見てきたんだ。人の本質を見抜く力がついたっておかしくないだろう?」
と、急に店主は遠い目になり、
「でもそんな私も昔は無知だった。けれどね、最愛の人に出会い、結ばれ、愛を育み、そして二人で貯めたお金でこの店を——」
急に話が飛んでまたいつもの思い出話が始まったので、ゆめ美は苦笑しつつ頬杖をついた。
「もーっまた奥さん自慢?いいよ、今日は相談に乗ってくれたお礼にいっぱい付き合ってあげる」
店主の妻は若くして病気で亡くなった。だが、時を経ても店主の心の中では妻と過ごした日々が鮮明に蘇り、色褪せる事は無い。
ゆめ美は、そんな店主のしつこいほどの思い出話が嫌いじゃなかった。店主の話を聞き、自分もいつかそういう人に出会いたいと、子供の頃からずっと思い続けていた。
(今度会ったらトッティに伝えよう。自分の気持ちを)
人知れず決心し、コーヒーを飲み干すゆめ美なのだった。
トド松ルート2へつづく