第26章 ※チョロ松エンド 僕を君に捧ぐ
「ゆめ美ちゃーーん!」
雲ひとつない空。優しく頬を撫でる風。
絶好のデート日和。
恋人に名を呼ばれ、ゆめ美はスマホから視線を上げた。
「チョロ松くん…!」
駅前の雑踏の中でも、チョロ松はすぐにゆめ美を見つけ駆け寄った。
「おまたせ…!行こうか!」
「うん」
当たり前のように繋がる手と手。
何度か重ねたデート。
その度に近づく心の距離。
「今日は平気だった?」
「ぜんっぜん。あいつら、前回のドアノブローションだけじゃ飽き足らず、今回は玄関に爆竹仕込んでやがった!」
「あはははっ!テレビのドッキリみたいだね!」
二人の交際がスタートしてからというもの、デート当日にチョロ松へ嫌がらせをするのが、ニート達の新たなルーティンになっていた。
だがしかし、チョロシコスキーはそんな些細な圧力に屈するような男ではない。
ゆめ美とイチャコラする為ならば、雨が降ろうが聖澤が降ろうがなんのそのである。
そして今日は二人にとって大切な日だった。
「重くない?荷物持とうか?」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
ニコッと微笑み、少し大きめのトートバッグを肩にかけるゆめ美。そんなゆめ美を見て、チョロ松もずれ落ちかけたリュックを直した。
ただのデートにしては多めな荷物と、財布の中に忍ばせるは新幹線のチケット。
「楽しみー!みんなに温泉饅頭買ってこう!」
「ははっ、そうだね!」
(ついに…ついに来たんだ…!この時が……!!僕の新品をゆめ美ちゃんに捧げる日がぁぁああ!!!!)
そう。今回のデートは一泊二日の温泉旅行である。