第20章 アンケート回 松怪奇譚〜落〜
蜘蛛型女将の奇襲により、二人は抵抗する隙すら与えられず、蜘蛛の糸で腕をぐるぐる巻きにされてしまった。
手を拘束され、言われるがまま地下室へ続く階段を下りている。
背後からは、懐中電灯を持った女将(人の姿に戻っている)が殺気を漂わせ付いてきている。逃げるのはまず不可能だろう。
「お前達のおかげで今夜は七匹揃って久々の食事だねぇ」
不吉な宣告に、ゆめ美は恐ろしさのあまり目に涙を溜めて唇を噛む。
その横顔を、一松は何も言わずジッと見ていた。
「さぁごはんだよー!」
嬉々とした声で女将が地下室の扉を開けた。
地下室の中は停電の為、何本もの蝋燭が立てられ不気味な雰囲気を醸し出していた。寝ずの百物語でも始まりそうだ。
蝋燭の炎が揺らめく部屋の中央を見やり、ゆめ美は悲鳴を上げる。
「みんなっ!!」
松達五人は手を蜘蛛の糸で縛られ、パンイチで鉄格子の前に座らされていた。鉄格子の奥には、六匹の青鬼がご馳走を前によだれを垂らし、ディナータイムを今か今かと待っている。
「あーぁ、二人もダメだったかぁ」
こんな時ですらおそ松はヘラヘラと笑顔だ。
「あ、あのっ、なんで裸にされてるの!?」
「わかんなーい。こいつらの趣味じゃね?」
「食うためだよ!」
くわっと鬼の形相で女将が怒鳴ると、パンイチ松達は震え上がり肩を寄せ合う。
「さぁ、お前達も脱ぐんだ」
女将がゆめ美に手を伸ばすが、ゆめ美は必死に抵抗する。
「イヤです!絶対に!」
「今更何を恥ずかしがってるんだい?これから臓物を見せびらかすんだから変わりゃしないよ!それに、さっき部屋でセッ」
「ワーーーーッ!!!!分かったよ脱げばいいんだろ脱げばぁぁああ!!」
「キャァァア!!」
一松は女将の声を遮り、自ら進んで全裸になった。猫の爪でいとも容易く蜘蛛の糸を切ると、パンツまで脱いですっぽんぽんだ。誰もそこまで頼んでないのに、である。
ゆめ美は目を閉じ、兄弟は呆れて半眼で一松を見やった。