第17章 アンケート回 松怪奇譚〜鬼〜
おそ松はチョロ松の声に耳を貸さず、スマホを受け取り時計を見た。
時刻は夜の十時過ぎ。
時間を確認すると、尻餅をついているゆめ美と目線を合わせるように屈んだ。
「ゆめ美ちゃん、十一時になったら一度戻ってくるからな」
不安げに瞳を揺らしながら頷くゆめ美の頭をそっと撫でる。
「でもさ…もし、約束の時間になっても俺らが帰って来なかったら、三人で朝までどっかに隠れてて。朝になればイヤミ達が迎えにくるはずだから。それまで女将さん含め、誰にも見つかっちゃダメ。いいな?」
「そん…な…!でもっ、二人は…!」
「へーきへーき!その代わり、無事にカラ松と十四松連れて帰ってきたらさ、チューしてくれよな?」
「おそ松くん…」
ゆっくり、おそ松がゆめ美に顔を近づけると…
「あ……」
「へへっイタイねー」
サングラスをゆめ美のおでこにかけ、悪戯っぽく鼻の下を擦って笑った。
立ち上がり、ジト目で待つ猫背の元へ笑顔で駆け寄る。
「よし行こーぜ!帰還してディープキスしーよおっと」
「……」
一松は無言でゆめ美を一瞥すると、踵を返し歩き始めた。おそ松も横に並んで歩き出す。
「おそ松くん、一松くん、気をつけて…!」
おそ松は振り返らずに手をヒラヒラさせた。
そして、あっという間に二つの影は暗い暗い廊下に消えて行った——。
18章へつづく