第17章 アンケート回 松怪奇譚〜鬼〜
案内された客室は、意外にも外観とは対照的で清潔感があった。
「へぇ、もっとボロいかと思った」
張り替えられてそんなに日が経ってなさそうな畳を撫でながら、チョロ松。その横で十四松はクロールをしている。
「女将さんの言う通りホントにただの演出だったのかな?ロビーや廊下は甲冑とかあって死にかけたけど客室はマトモ。はーよかったぁ」
なんて一人ごちりながら、トド松は座布団にちょこんと座り、ゆめ美が入れたお茶をすすっている。
その横で、座布団を枕がわりにゴロンとしていたおそ松がムクリと起き上がった。
「夕飯までどーする?つか温泉街を観光出来ると思ってたのに、こんな山奥に取り残されてどこも行けねーとかつまんなーい!」
起き上がったのにおそ松はまたすぐ寝転んだ。座布団を抱きしめながらゴロゴロ転がる。転がり続けて革ジャンをハンガーに掛けていたカラ松に激突。ブチッと嫌な音が聞こえた。
「おい!ファスナー取れたんだけど!?」
「えー?ごめんごめーん。だってヒマなんだもーーん。そだ!ゆめ美ちゃーんひとっぷろ浴びてこなーい?混浴で!」
「い、一緒に!?無理だよそんなの!」
「いーじゃん!きっとばーさんとか仲間いるから平気だって」
ぐいとゆめ美の腕を掴む手に、すかさず手刀が振り下ろされた。
「いってーな!何すんだよ!」
「このバカ。お前と二人きりにだけは絶対させないからな!」
「はぁ?一番ムッツリなのはテメーだろーが!」
おそ松とチョロ松が取っ組み合いの喧嘩を始めると、弟達は誰も止めず野次を飛ばし観戦する。
そんな中、カラ松は一人部屋を出て行こうとドアへ向かった。気づいたゆめ美が後を追う。
「カラ松くん、どこ行くの?」
「んー?夕食まで旅館の中を見て回ろうと思ってな」
「私も行っていい?温泉の場所とか把握しておきたいんだよね」
「いや、一人で行こうと…」
断りかけたが、目を爛々と輝かせるゆめ美は、カラ松アイズにはあまりにも魅力的に映った。
「——と思ったが、カモンヴィーナス!!」
「あははっ!うん!」
ウインクしながら親指を立てるイタ松にゆめ美は苦笑しつつ、ひょこひょこ後をついて行くのだった。
・・・