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おそ松さん〜恋セヨ松野さん〜

第16章 アンケート回 松怪奇譚〜序〜




いつもの無駄な優等生ぶりっこが始まった三男を横目にカラ松が口を開く。


「もう日も暮れたし、今から七人で宿を探すのは困難だろう。本物ではなく演出と言うのならばそれを信じるまでだ。女将さん、案内をお願いします」

「ホーラホラホラ…どうぞ中へ…」


うすら笑みをたたえた女将が玄関前で手招きをしている。薄汚れた身なりのせいで、手招きすらも妖怪かよって言いたくなるくらい不気味である。
そして、チョロ松の言う通り女将から玄関の明かりが透けて見えるのは、物理的にありえなさすぎて魑魅魍魎臭がハンパない。

皆が尻込みする中、おそ松は頭の後ろで手を組んで先陣を切った。


「ま、カラ松の言う通り、今から宿探すつったらやっすいラブホしか取れないでしょ?なんかお化け屋敷みたいで楽しそーじゃん?早く行こうぜー」


おそ松に続きゆめ美も一歩を踏み出した。ゆめ美の腕にしがみつき、トド松もビクビク怯えながら歩みを進める。


「トッティ、この間のジェイソンで特訓したんだからもう平気でしょ?」

「ジェイソンー?なにそれー!!」

「な、なんでもないよ十四松兄さんっ!それより早くチェックインしよ!」


六つ子とゆめ美達がチェックインの記帳をしている間に、女将は入り口で待つイヤミとチビ太の元へジュラルミンケースを持って近づく。

女将は顔をニヤつかせながらケースを開き、中身を二人に確認させる。


「……確かに」

「悪ぃな。こんなにもらっちまって」

「いえいえ、ほんの気持ちですから…」


イヤミは札束を背中に隠し、六つ子達の後ろ姿に声をかけた。手をイヤホンのように口元に添えて叫ぶ。


「チミ達ー!ミーとチビ太は別の宿に泊まるザンスー!明朝、チェックアウトに合わせてお迎えにあがるザンスー!」


振り返り手を振るゆめ美達に、張り付いた笑みを返すイヤミ。一方、チビ太は罪悪感で目をそらす。


「——どうぞごゆっくり呪われろザンス……」


イヤミとチビ太の乗るワゴンは、ひっそりと霧の中へ消えて行った。








17章へつづく
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