第14章 トッティメモリアル
ゆめ美が試着を終えてカーテンを開けると、目をキラッキラさせたトド松と優しく微笑む店員が出迎えた。
「とってもお似合いですよ。これからの季節にもピッタリな色だと思います」
「わぁっ!やっぱりピンクいい感じだね!」
「そうかな?実は水色はサイズが合わなくて…」
店員は水色のワンピースを受け取ると、残念そうに頭を下げる。
「申し訳ございません。水色はワンサイズしか置いてないんです」
「ならピンクで決まりだねっ」
「うん。持ってない色だし、これにする」
「ありがとうございます。彼氏さんとお揃いの色で素敵ですね!」
トド松は「彼氏」と呼ばれても、否定せずニコニコと笑っている。
「じゃあユメ、ここで待ってるから」
「ありがとう」
(彼氏って……)
ゆめ美は胸のドキドキを悟られぬよう、静かにカーテンを閉めた。
着替えて試着室からゆめ美が出ると、トド松は奪うように服を取り、スタスタとレジへ向かった。トド松の思いもよらぬ行動に、ゆめ美はあたふたしながら後を追う。
「トッティ?あの、私自分で買うよ?」
「いいからいいから」
何度もゆめ美が声をかけているのに、トド松はスルーして会計を済ませてしまう。
「本当にいいのに…」
店を後にし、申し訳なさそうに呟くゆめ美。
「べつにいいでしょ。ボクが気に入ったデザインなんだから」
と、涼しい顔でトド松。そして、さりげなく買った紙袋も持つという男っぷりも発揮している。
「その代わり、この次ボクと会う時、絶対このワンピ着てきてね」
「わかった……あの、本当にありがとう。大事に着るから」
トド松は横目でゆめ美を見やり、さりげなく手を差し出した。
「トッティ…?」
「いいから繋いで」
顔が熱くなるのを感じながら、ゆめ美は差し伸べられた手に自身の手を重ねる。
照れているのは自分だけなのだろうか、なんて考えながら、繋がった手をそっと握りしめ、二人の体温が溶け合うのを感じるのだった。