第14章 トッティメモリアル
(トッティ、さすがにまだ来てないよね…)
赤塚駅の改札前にゆめ美はいた。
約束の時間まであと十分。
今日は、ゆめ美とトド松の二人で、食事や買い物だけでなく、アトラクションも楽しめる赤塚ドームシティでデートする約束をしていた。
トド松はトト子も誘ったのだが、「店番あるから〜」と笑顔の顔文字で断られ、こうして二人で遊ぶことになったのである。
ちなみに、トド松にとって二人きりになれるのは願ったり叶ったりなのだが、ゆめ美はそれに気づいていない。
(二人になっちゃったけど、トッティよく女子と遊んでるって言ってたし、複数で出かける方が好きなんじゃないかな?)
なんて後ろ向きな気持ちになっていると…
「やっほー」
背後から、ゆめ美の肩を誰かが叩いた。
訝しげに振り返るゆめ美の目に入ったのは、アロハシャツにロン毛の見知らぬ男。
(今時こんな人いるんだ…)
警戒心MAXでそっぽを向くも、アロハ男はゆめ美の前へと回り込み話しかけてくる。
「ねぇねぇおねーさんひまぁ?お茶しなーい?」
「いえ、待ち合わせしてるんで」
「えー?キミみたいな可愛い子を待たせる酷いヤツなんていんの?そんなのほっといてさぁ、俺と楽しいことしよーよ?ね?」
「けっこうです」
絵に描いたような胡散臭いナンパの常套句を浴びせられ、嫌悪感剥き出しになるゆめ美にひるむことなく、アロハ男はナンパを続ける。
「いーじゃんいーじゃん一回くらい!悪いようにはしないからさ〜」
「話してください!」
アロハ男がゆめ美の腕を掴んだ——その時。
「あのー、ちょっといいですかぁ?」
「あ?」
ぶりっ子な声のトーンとは裏腹に、声の主はアロハ男の腕を力強く握り、ゆめ美の腕から引き剥がした。