第13章 十四松の誓い
目を丸くするゆめ美を他所に、十四松は立ち上がると、下に向かい手を振った。
「みんなーー!!おかえりなサイドスローー!!」
「ただいま十四松兄さん!あれ?ユメ!?」
十四松の視線の先には、松野家の玄関前で佇む五つの影が薄ぼんやりとあった。もうすっかり日が暮れて、ゆめ美にはどの影がどの松なのか暗くてよく見えない。どうやら十四松は夜目がきくらしい。
「なにやってんだ十四松ー!暗いし危ないからゆめ美ちゃんを速やかに降ろせー!」
「あいっチョロ松にーさーーん!」
威勢良く返事をすると、ぴょんっとベランダへ飛び降りた。
「ゆめ美ちゃーん、降りれるー?」
梯子を支えながら、十四松が心配そうに声をかける。
「うん、だいじょ……」
ゆめ美は下を見て震え上がった。
「十四松くん…暗くて足場が見えない…!」
「じゃあジャンプしてー!!」
「無理だよそんなの!」
「ダイジョーブ!!受け止めマーーッスル!!」
「いや、私重いから、梯子で頑張ります…ってキャツ!?」
言ったそばから早々に足を滑らせるゆめ美だった。
「ゆめ美ちゃーん!?」
下から見ていた五人は気が気じゃない。口々にゆめ美の名を呼び狼狽する。
身体が浮き、恐怖でゆめ美は思わず硬く目を閉じた。
そして、落ちてきたゆめ美をとすっと十四松は華麗にお姫様抱っこする——はずだった、が…。
「十四松くーーーんっ!!!!」
背中からではなく、スカイダイビングよろしく大の字で落下するゆめ美。
「あれーそーくんの!?まーいーや!!ばっちこーーい!!」
十四松も腕を広げると、
「キャアァァァア!!」
ゆめ美は見事、十四松の胸へダイビングした。