第13章 十四松の誓い
(どうしよう、緊張してきた。十四松くん、どうしてこんなに…)
照れに照れるゆめ美の気持ちに気づくことなく、十四松は沈みゆく夕日を眺め口を開く。
「ぼく、一松兄さんのことずっと落ち込んでたんだ。だから、そんな風に言ってくれるなんて思わなかった。ほんとにありがとう」
「あ、あははっ、思ったことを言っただけだし、大したことは言ってないよ。……あのさ、急に雰囲気変わったけど、本当に十四松くんだよね?」
「ゆめ美ちゃんが十四松だと思えば十四松だし、違うと思ったら違うんじゃないかな?」
「え?ええっ!?」
(なんだかワケがわからなくなってきた)
十四松が急に十五松にでもなったのではないだろうかなんて、ゆめ美がありえない妄想を始めると…
「見てー!一番星ー!!」
「…ほんとだ」
いつの間にか十四松は、ゆめ美の肩を抱いていた腕を離し、一番星を指差しながらいつものようにニッカリ口を開けて笑っていた。
「ね、ゆめ美ちゃん。ぼくね、あの星に約束したよ。もしゆめ美ちゃんがなんかにクソしんどくなったら、今度はぼくが助けてあげる!」
そっとゆめ美の手を取って、ぶんぶんと振る。彼なりの誓いの握手なのだろう。
「ぼくね、気づいたんだ。側にいるだけじゃダメなんだって。辛い気持ちって、隠しちゃうと見えないけど、それでもちゃんと見つけてあげないとって」
宇宙のように深い瞳を向けられ、ゆめ美は吸い込まれるようにその瞳を見つめ返した。