第13章 十四松の誓い
平日の昼間から、駅前のスタバァは混み合っていた。
ノートパソコンを開くスーツ男子、会話に花を咲かせる主婦、まったり過ごす老夫婦…。
様々な人で賑わう中、カウンター席にゆめ美とトト子の姿があった。スコーンをつつきながら、ガールズトークに夢中になっている。
「やっぱぁ、年収五千万は硬いでしょー?あとぉ、イケメンで優しくて爽やかで高学歴でスポーツマンで浮気しないで家庭環境も自分に近くて週末には必ず外出して…」
「あのさ、そんな人いないって。いたとしても出会えるかどうかは別問題だよ?」
「だって、目標は高く持たないとじゃなーい?じゃあゆめ美はどんな人がタイプなのー?」
と聞かれて、ゆめ美のスコーンをちぎる手が止まる。
「うーん…私は……飾らない人、かな」
当たり障りのない返答に、トト子は「呆れた」とでも言いたげに嘆息した。
「何よそれー。飾らない人ってさ、十年間同じトレーナー着続けてますってのだって飾らない人じゃない。ゆめ美にはこだわりとかないのー?」
「こだわり?」
ゆめ美はストローに口をつけ、視線を上げながら考える素振りをすると、
「私は、条件とかこだわりより、出会って仲良くなって、気が合えばいいけど」
「あんたねぇ、もっとシビアになりなさいよ!気が合えばニートで童貞で文無しでもいいの?そんなのと付き合ったって自分が損するし、周りに自慢出来ないし、付き合うメリット一つもないでしょー!」
「トト子って現実的だね」
「えー?言わないだけで女なんてみんなこうじゃなーい?ゆめ美だって、同じ顔で医者とニートだったら医者を選ぶくせにー」