第10章 恋熱にほだされて
「静かにしてくれ!ようやく眠ったところぅおぉぉおぉお!?」
カラ松がドアを開けた瞬間、一松が首を絞める勢いでカラ松の胸倉を掴む。
「なんでテメーが出てくんだクソ松!!殺すぞクソ松!!なんかの肉にすんぞクソ松!!」
「な!?ちょ、待て!誤解だ!オレはたまたま…!」
聞く耳を持たない一松は、凄みながらグラグラとカラ松を揺らす。
「テメーはたまたま女の家へ上がり込むのか!?ブチ殺すぞこのクソがぁっ!!」
「ちょ、ちょっとみんなどうしたの!?」
騒がしさに目を覚ましたゆめ美が、パジャマ姿で玄関へやってきた。
一松はパッと手を離すと、バツの悪そうに十四松の後ろへ隠れる。
「ゆめ美ちゃん!店長から風邪だって聞いたからお見舞い持ってきマシーン軍団!」
十四松はニコニコしながら、右手に持った果物とボカリの入ったビニール袋を見せた。
「そんな、いいのに…!ごめ…いや、ありがとう!でも移したら悪いから…」
「悪いから帰れって?大丈夫だよ!ボク達こう見えて頑丈なんだから!ね?兄さん達」
末っ子が同意を求めると、こくこくと頷く兄三人。
「気持ちは嬉しいけれど、本当に平気だから」
「いいからいいから!カラ松兄さんだけ家入るとかずるいもん!じゃ、お邪魔しまーす!」
「ぼくが治してあげようかー?」
「ノー!やめるんだ十四松!分裂だけはしちゃあいけない!」
・・・
翌日、ゆめ美の風邪ウイルスは六つ子全員に蔓延したそうな。
11章へつづく