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【YOI・男主】Stay Gold

第3章 再会!帰郷のリンクメイト!


いつもの癖でそのまま手の甲に口づけそうになるが、その時は今ではない。
後で、という意味を込めて最愛の皇帝を見れば「パーフェクト」とお褒めの言葉が降ってきた。
ヴィクトルが降りてくるのを待っていたメディアやファンが、既に黄色い声をあげている。

「宮樫コーチにエスコートされて登場しました!ロシアの皇帝、ヴィクトル・ニキフォロフ!」

力のこもった実況は諸岡アナウンサーだ。
徹が選手だった頃からあの熱さには当てられてきたが、今日も絶好調である。
ヴィクトルも絶好調だ。
黄色い歓声に応えて、ウィンクを飛ばしたり手を振ったりと忙しい。
フィギュアスケートの選手というよりは、アイドルか俳優のような振る舞いである。

「ほら、トールもちゃんと応えないと」
「これ僕のファンじゃなくてヴィクトルのファンでしょ」
「どうかな?」

ヴィクトルに向けた声援の中、ふと、ハッキリと通る声が届いた。
「トール」と自分を呼ぶ声。
振り返れば、数名の女の子が徹へ向けて手を振っている。
見憶えがある。
最後のエキシビションで、一際大きな歓声をくれた子達だ。

「ほらね」
「……僕はもう、滑らないのに」
「でもトールの華やかさも優しさも、今は俺の演技の中にある」
「ヴィクトルの……?」
「トールが俺にくれたんだろう?」

彼女達はそれを見に来てくれてるんだよ。だから、トールも応えないとね。
ヴィクトルがささやき、そっと徹の背中を押す。
徹は何をしたものか少し迷って、ヴィクトルのいつものファンサービスを思い起こし、いやいやそれはちょっと……と頭を振る。
ウィンクとかしたことがない。
できる気がしない。
迷った末に、手を振って「ありがとう」と微笑むに留まった。
選手時代にファンサービスをしている余裕はなかったし、ヴィクトルのは参考にならない。
また黄色い声が上がったので、あれでよかったのだな、と徹はほっと胸をなでおろした。

「ヴィクトルー!あれ見せてー!」

のもつかの間。
徹のファン1号が、ヴィクトルに向けてコールする。
「あれ」という単語にヴィクトルはパッと顔を輝かせ、徹は反対に青ざめた。
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