第5章 現れた天使
頑張って上半身を崩れさせないようにと手に力を込めると、片方の手の爪が紅楼の胸に食い込んでしまい血が滲む。
『や、やらぁっ……ぁふ、あぁっ、ごめ…っ、ごめん…なひゃいぃ』
爪を……爪を……戻さないと。
そう頭では思っていても、下から来る快楽で頭がドロドロに溶かされていくように思考が働かない。
激しくて、奥まで犯されて、淫魔なのに主導権を握られて、逃げないように縛られて、快楽を教えられて……淫乱になっていく。
『ゃ……ひ、あぁぁぁぁぁぁぁっ♡』
我慢出来ずに大粒の涙を流しながら爪を更に食い込ませて、腟内をぎゅぅぅと締め付けて達す。
その締め付けに合わせて紅楼も中へと出す。
熱いものが、奥へと注がれるのを感じながらは紅楼の胸へと崩れ落ちた。
『ぅっ……く、ろ…ごめっ。 つめ、ち……でた』
食い込んでいた爪を抜くと、ジワッと血が出てきた。
「……覚悟は、してましたけどね。 痛いですよ……まったく」
『んっ……怒らない、の?』
「今日のところは……ですけどね。 望んでいたんでしょう?」
頭を撫でられながら言われたその言葉で、少し前の自分の考えていたことが思い出された。
(たぶん、自分の物だって……証? そんなのを付けたいって思っちゃってるのかもしれない。)
見透かされていたんだ。
恥ずかしいような……でも気持ちが分かってもらえた事が嬉しくて、顔がほころぶ。
『……うんっ』
「こそ、もう怒りは治まりましたか?」
『もう大丈夫だよ』
そう言って笑うには、あの鋭い牙も爪ももう無かった。
その様子を安心したように確認した紅楼だった。