第5章 現れた天使
「すごく伸びるんですね。 ここまで長くなるとは、思ってませんでした」
『噛んでやろか?』
牙を見せながら不敵な笑みを浮かべてみるが、紅楼には脅しにもならなかったようで質問で返されてしまう。
「噛みたいんですか?」
噛みたい、か……
そんなのでは無いのか、そうなのか……自分でも分からないがモヤモヤ、イライラしているのだ。
だいぶ鎮まってはきたが、まだ駄目。
たぶん、自分の物だって……証? そんなのを付けたいって思っちゃってるのかもしれない。
でも言わない。 まだ、言わない。
『そ、噛みつきたいの。 ムシャクシャするから』
「ムシャクシャですか。 何をそんなに怒っているのか、分からないんですがね……」
困ったように言われたその言葉で顔や耳が熱くなるのが分かり、何故か紅楼を引っ張って押し倒す。
尻尾が激しくベッドを叩きつける。
「顔が真っ赤ですよ」
『っ! べ、別に……ちょっと暑いだけ』
「……どうして怒ってるんですかね」
『〜〜っ////』
「痛いですって」
赤い顔を隠しながら、意地悪く聞いてくる紅楼の肩に爪をたてると、笑いながら注意される。
意地悪、紅楼の意地悪っ……
頬を膨らませ睨めば紅楼は笑う。
そんな光景を見てこのまま幸せになれるんじゃないか、などという不思議な錯覚に陥る時がある。
悪魔が幸せになんて……笑える話だ。
は微かに笑うと、紅楼の上へと覆いかぶさった。
『今日は私がするからっ。 紅楼は、何もしないで』
そう告げるとは紅楼の返答を待たずにズボンと下着をズラし自身を出す。