赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第2章 秋の風に吹かれ、
またな、と手を振れば、ふぅわりと笑って同じように手を振る雨宮。後輩と並ぶ後ろ姿が角を曲がるまで見送り、それから歩き出す。
「しっかしなー、木葉が雨宮と付き合ってるって俺全っ然気付かなかった!」
「バレないようにしてたんだよ」
うむむ…と腕を組む木兎に、俺は苦笑いしながら言った。その隣を歩く小見は、自慢気にニッと笑った。
「ま、俺は知ってたけどな~」
「マジか!?」
「なんで教えてくんなかったんだよぉ!」
「だって木兎に言ったら次の日には学校中に広まることになるだろーが!」
「うぐ…」
くそぉ言い返せない!と地団駄をふむ木兎は、同学年、更には一部活のエースには到底見えない。だが不思議と、こいつには人を惹き付ける何かがあるから腹が立つ。
「で、なんで付き合うことになったんだ?」
興味津々といった様子で訊いてくる猿杙に、なんでだったっけ、と俺は考える。
「あー、あれだ。委員会で同じだったんだ」
ふっと思い出したのは、2年で初めて話した時のことだった。
空き教室にある日突然集められた風紀委員。これからの時期学祭の準備が始まるので、それについての話らしかった。
『木葉君、だよね。隣、いい?』
「お、おう…」
窓際の一番後ろに座り、ボーッとしていると、隣に一人の女子生徒が立っていた。それが、雨宮との出会いだった。
突然名前を呼ばれ、不審に思った俺は、堅い声で雨宮に訊いた。
「なんで名前、知ってんの?」
『えと、赤葦京治って知ってる?バレー部の』
「後輩、だけど…」
『幼馴染みなの。それで、バレー部の人の話とか聞いて。見たことあるなぁって』
ごめんね迷惑だった?困ったように言う雨宮に、俺は首を横に振った。知ってるヤツの名前が出たことで、"警戒心"なんてものは失せていたから。
『私、雨宮実緒です。1年間同じ委員会だし、よろしくね』
「木葉秋紀、バレー部。よろしくな」
互いに名前を言うと、雨宮は俺に右手を差し出してきた。その手を握ると、俺のより全然小さくて、華奢で、女子だなぁと思ったのを鮮明に覚えている。