赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第3章 雨の声を聴く。
帰り道、無事仲直りできた木葉と、赤葦君を誘って3人で帰ることにした。木葉は最後まで渋っていたけど。
『本当にごめんね、私のせいで…』
「だーかーら、その話はもう終わり!」
「いつまで引きずるんですか、ソレ」
しょげる私の頭を、2つの手がポンと撫でる。そろりと両隣を見ると、木葉も赤葦君も、優しい顔で笑っている。
「雨宮は笑ってる方が似合うぞ」
「そうですよ。俺は雨宮さんの笑顔が大好きなんですからね」
『はぁい』
2人に言われ、私は笑う。
「おい赤葦、お前何気スゴいこと言ったぞ」
「あ、もう隠さないことにしたんで」
『え、赤葦君…?』
「あと、その"赤葦君"てやめません?」
『じゃあ、なんて…』
「前みたいに"京治君"で、実緒さん」
『うん、京治君ね』
「コラ赤葦、何フツーに呼んでやがる」
「あれ、木葉さんいたんですか」
「テメェ、ぶっ殺すぞ…」
『こ、木葉……ぅ、あ、秋紀っ!』
「っ、おう///」
『秋紀、で、いい?』
「わーった。俺も実緒って呼ぶ」
「木葉さん、確実に照れてますよね」
『え?あ、顔赤ーい!』
「そんなんじゃねーよ!」
「浮気したら実緒さん貰いますから」
「冗談に聞こえねぇよ!」
頭を抱えて叫ぶ木葉、改め秋紀。その様子に京治君とクスクス笑う。
その時、ぽたりと空から雫が落ちてきた。晴れていた空は、灰色の雲に覆われている。
「降りますね…俺の家まで走りましょう」
『早くしないと濡れちゃうね』
「あかーし!実緒の手ぇ離せ!」
段々と速くなる雨足の中、けらけらと明るく笑いながら走る。秋の雨は冷たいはずなのに、秋紀と京治君といると、不思議と暖かく感じられた。
秋紀がいて、京治君がいて、私がいて。
そんな当たり前が、
すごく大事なんだって、
ようやくわかった。
京治君と歩いた茜色の景色も、
秋紀と感じた北風の訪れも、
しとしとと降る時雨も、
すれ違いも、誤解も、仲直りも、
全部、ぜんぶ、大事な私の時間だから。
言葉にすれば、伝わるはずだから。
だから私は、不器用でも、下手くそでも、
少しずつ、自分の言葉で紡いでいこう。
秋紀、京治君。
私の声、聴こえますか―――?
Fin.