第1章 彼女は何も持たない
「...ここは......」
寝室、とはとても言い難い空間で『ワタシ』は目覚めた。
まるでボイラー室の様な、ちょっと広い物置の様な場所を、キョロキョロと見渡し、そして頭を抱えた。
くしゃ、と髪を掴む。
窓が無く、非常用の淡いオレンジ色の照明しか点いていない室内は、とても暗く、今握っている自分の髪の色すら分からない。
何も知らない。
髪の色...どころでは無い。
髪型も、顔も...名前も...性格も...年齢も...。
存在も。
何もかも...分からない。
『ワタシ』は...誰...?