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秋色恋路。(企画SS)

第1章 木枯しラプソディー(HQ・岩泉一)


すると、手を握られ額と額が合わさった感覚がした。
驚いて目を開けそうになる、だが今目を開けたらの顔が至近距離だ。
絶対に開けられない。

「はじめも…前に進んでいいんだよ」
「………」
「立ち直る事を…誰も咎めたりしない」

ゆっくりとが話す言葉を岩泉は目を閉じたまま黙って聞いていた。

全国へ行けなかった事で次へ頭をシフトする事を薄情だなんて思わないから。
その程度だったんだ、なんて誰も思わないから。
だから、敗戦に縛られ続けなければなんて、責任を感じないで欲しい。

もう一生分くらい悔やんだのだから。

が話し終えると部屋に静粛が戻る。
木枯らしが窓をカタカタと揺らす音が聞こえた。

「……っ」

握られていた手を今度は岩泉が強く握り返す。
それを感じたは岩泉の頭を引き寄せそっと抱き締しめた。

「はじめ…三年間お疲れ様」

の心音を聞きながら岩泉の意識はゆっくりと薄れていった。
小さく寝息を立て始めた事を確認するとも同じ様に目を閉じて岩泉の頭に頬を寄せる。
そして芯の強い黒髪を優しく撫でた。





また、同じ夢だ。





及川のロングトス。
最高のタイミング。
決まらずに着地した先の、影ーーー。

いつもと同じ様に足が沈んでいく、絶望に似たその感覚が岩泉を引き込もうとした次の瞬間。

突然の浮遊感。

見上げれば自分の手をしっかりと握っているの姿があった。

一緒に、進もう。

笑ってそう言っていた。





「ん……」

一足先に目を覚ました岩泉はベッドサイドの目覚まし時計を確認した。
時計の針は11時を少し過ぎたあたりを指していた。

深く眠っていたのだろう、岩泉の頭はとてもスッキリしていた。






「お は よ う い わ ちゃ ん!!」






もう一人の幼馴染みの苛立ちを含んだ声が部屋に響いた。

「及川?」
「ちょっとソレ、説明して欲しいんだけど?なんで岩ちゃんとちゃんが寝てるわけ?」
「あ……?」

指摘されて自分の隣を見る。
そこにはすやすやと気持ち良さそうに寝ているの姿。
その手はしっかりと岩泉の手と結ばれていた。




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