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秋色恋路。(企画SS)

第1章 木枯しラプソディー(HQ・岩泉一)


「……め、…はじめっ!」
「…!!」

岩泉は体を揺すられて目を覚ました。
見えたのは自分の部屋の天井と幼馴染みの心配そうな顔。

「ちょっと苦しそうだったから…おばさん出掛けたよ。外で会ったらはじめを宜しくだってさ」
「……そうか、ワリィ」

『あの日』以来、こうして時々岩泉はうなされる。

春校予選の準決勝での及川からの超ロングトス。
それを最高のタイミングで跳んで打つ、そして阻まれる。
着地した先はコートではなく真っ黒な影の上でそのまま引き込まれるように足が沈んでいく。

そんな夢を、よく見るのだ。

「午後練、行くんでしょ?」
「あー…、どうすっかな…」
「………」

頭を掻きながら曖昧な返事をする目の下にうっすらと隈が出来ている。
予選後から三年生の部活動は自由参加になった。
バレーがしたくて堪らないくせに、こうして濁った返事を寄越す。
やっぱりあの試合が彼を縛り付けているのだろうか。

チラリとはベッドサイドの目覚まし時計で時刻を確認する。
時刻は8時半、練習は午後1時から。

「…っうお!!?…お前何す…ってオイ!」
「はじめ、まだ寝れるから」
「……は?」

目の前の幼馴染みは何を言っているのか?

考えている間にもはどんどん話を進めてしまう。
ジャージの上着を脱いで床に放る。
同じ、ホワイトとペールグリーン。
ジャージの行方を岩泉が目で追っているとその間には岩泉のいるベッドへと乗り上げた。

ギシリとベッドのスプリングが軋む。
その音に岩泉はゴクリと唾を飲み込んだ。

「おま…っ!何考えてんだ…!出ろって…!」

岩泉がそう言うのも聞かず、はベッドへ潜り込んだ。

「はじめも、早く」
「早くったってな…」

この状況をどうすべきなのか考えていると腕を引かれて強制的にベッドに潜り込まされる。

「コレ…!ヤベェって…!!」
「いいから、静かにしてはじめは目を閉じて」
「……、」

言い出したら聞かない、長い付き合いのの事は岩泉もよく分かっていた。
仕方なく観念して大人しくする。
そして言われるがままに目を閉じた。


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