第8章 終戦
とりあえず此れからどうしようかと悩んでいると不意に人の気配が背後からした、徐に振り向けばそこには眼鏡をかけた黒髪の女とその背後には同じ制服に身を包んだ数十人の男達がいた。
──海兵だ、ここまで接近されても気付かなかった事にユナは歯噛みした。
「たしぎ曹長!これはチャンスです!麦わらの一味を一網打尽に出来ますよ‼︎」
一人の下っ端海兵が眼鏡をかけた女、たしぎに又してもないチャンスだと声を上げる。
それを聞いてユナの目付きが鋭くなる、見据えるは隊長であろう女たしぎ。
「……ダメです…」
「な…なぜですか⁉︎全員揃って今…‼︎格好の餌食なんですよ⁉︎」
たしぎのまさかの答えに部下達は動揺を隠せない、それに対して何かと葛藤しているのか…拳を震わせてたしぎは俯く。
「……これは命令です…‼︎」
「…曹長‼︎限られたチャンスです奴らが意識を取り戻しては我々の力では…」
尚も言い募る部下にたしぎは顔を上げ意を決して口を開く。
「今…あの一味に手を出す事は、私が許しません‼︎」
声を荒げて言えば目の前の少女と目が合った、栗色の髪をした少女のその目付きは気を抜けば足が竦んでしまいそうな程の鋭さを伴っていた。
グッと口を引き結ぶとたしぎは踵を返して歩き出した、それを見た部下達も不満ながらもその場を離れて行く。
海軍の姿が見え無くなるとユナは一つ息を吐いた、海軍が何故手を出して来なかったのかは分からないが正直助かった。今の状態ではみんなを守りながら戦うのは難しい…そう思うと自分の不甲斐なさに嫌気がさした。
俯くユナの耳に今度は足音も荒くバシャバシャと音が聞こえてきた。顔を上げればそこには国王軍が数人此方へと向かって来ているのが確認出来た…これでみんなは助かる、そう安心すると遂にユナも意識を手放した──。
ユナが意識を手放した事で再び一味に雨が降り注ぐ…ザーザーと降る雨音だけがその場に残されていた。
──後に歴史に刻まれる戦いと──
決して語られる事のない戦いが──終結した──