第23章 終焉を告ぐ島の歌声と堕ちる陰
ルフィの黄金の着いた拳がエネルを捕らえ、そのまま舟に置かれていた大鐘楼へと勢い良く衝突した。
そして──
カラァァアン──…
カラァァアン──…
空島に鐘の音色が響き渡る。
それは今迄に聞いた事の無い、とても綺麗で心地良い音色だった。
「聞こえてるか⁉︎ ひし形のおっさァん‼︎ サル達‼︎」
「黄金郷は…! 空にあったぞ〜〜‼︎」
ルフィの叫びと大鐘楼の鐘の音が空島に響き渡る。ルフィの声は無理でも…鐘の音はきっと、地上にいるクリケット達に届いたに違いない。
そう思わせる程、大鐘楼の音色はいつ迄も響き渡っていた──。
「…ユナ〜〜!」
『ルフィ…!』
ユナは上空から降ってくるルフィを受け止めようと右腕を伸ばすが、ルフィは腕には掴まらずユナの腰を掴むとそのまま落下して行った。
掴まれた衝撃で肋が悲鳴を上げた…落下スピードと衝撃とを考えて欲しいものだ。
「ゴムゴムの〜風船!」
ボヨンとルフィでバウンドした二人は無事地面へと着地し、ユナは空を見上げる。
そこには先程の雷雲が嘘のように晴々とした青空が広がっていた。
「鳴った…」
『うん』
「聞こえたかな、おっさん達に」
『ええ…きっと届いてるわ』
ルフィに殴り飛ばされ、エネルはもう居ない。もう神に従う事も、怯える事もなくスカイピアは平和に暮らして行けるだろう。
けどきっとルフィはそんな事考えて無くて、ただ自分がやりたい事をやっただけ。大鐘楼を鳴らすのにエネルが立ちはだかったから、結果として倒しただけだ。
──”おれは自分のしてェ事をしただけだ”──
不意に”あの人”の言葉が脳裏を過った。
最近良く昔の事を思い出す、ルフィといると懐かしい感覚に襲われる。白ひげに居た時もたまにあったがルフィといたら忘れていた事さえ不意に思い出すのだ。
──今の私には懐かしい思い出はただ虚しさが募るだけ……無意識に帽子に触れようとしたが、その手は空振りに終わる。
そうだ、ナミに預けたままだったんだ……無性に今、エースに会いたくなった。