第18章 キミとの約束(前編)
「へぇ、割と賑わってんな」
『これなら食材もすぐ揃いそうね』
島の街にやって来たエースとユナは街をぐるりと見渡す、時刻は昼過ぎという事もあり街にはそれなりに人が行き交っていた。
「お、ここ入るか」
とある飲食店前で足を止めたエースが店へ入って行くとユナもそれに続いて店へと入る。「いらっしゃいませー」と迎えられながら二人はカウンター席へと腰を下ろした。
「おっちゃん、とりあえず炒飯五人前で」
『私はお水で』
「あいよ」
人の良さそうな店主は注文を受けるなり手際よく料理を作り始める。
「なんだよユナは食わねェのか?」
『うん、お腹空いてないからいいわ』
「空いてないってお前昼飯食ってねェだろ」
『…なんで知ってるの?』
「はぁ、やっぱりか」
『…! 引っ掛けたわねエース…』
船の上では先程まで別行動をしていたのに、エースが知っているなんて可笑しいと思ったら案の定だ。引っ掛けられた事に若干不貞腐れ気味のユナをよそに、エースはメニュー表をユナに手渡した。
「ほら、何か食え」
メニュー表を渡されたユナは渋々目を通す。
ユナがご飯を食べないのは今に始まった事ではない、別に全く食べない訳でもなく出された料理はしっかり残さず食べている。
ただそれは誰かが用意した場合のみでユナはほっとくと平気で一週間食べない事もあると前に仲間が言っていた。本人曰く意図して食べないのではなく食べる事を忘れるらしく、空腹の感覚もないらしい。
ユナは基本自分の事にも無頓着らしいが無頓着にも程があるだろと、それを聞いた時は耳を疑ったのを今でも覚えている。
だから飯時になると必ず誰かがユナを食堂に連れて行くという”暗黙のルール”があった。ここ最近は俺を探して度々ユナが食堂に来ていた為忘れかけていたが。
『おじさん追加でハンバーグひとつ』
「あいよ」
注文を終えたユナはエースに向き直る。
『そーいえばこの島の中心に大きな工場みたいなのがあったけど何かしら』
「そーいやあったなそんなモン」
「何だにーちゃん達知らないのか?」
二人の会話に店主が炒飯と水を出して口を挟んだ。出てきた炒飯にエースがガッツくのを尻目にユナは店主の話の続きを促す。