第17章 神との対峙
会うのは初めてだがこの男の”声”には覚えがあった。メリー号が特急エビに連れて行かれた時、それを止めようとしたユナを白い光が襲った…その時に声が聞こえたのだ、それは間違いなくこの男の声だった。
人を見下して嘲笑っているかの様なこの特徴的な声は一度聞けば忘れない。
「…はて、何のことやら貴様とは初めて言葉を交わすが……もしや貴様も”マントラ(心網)”が使えるのか?」
『”マントラ”…?』
聞き慣れない言葉に眉を寄せれば目の前の男は少し考える素振りをしてから「まァいい」と、それ以上は教える気は無いようだった。
「私は神。”ゴッド・エネル”だ」
『…ふざけてるの?』
「ふざけてなどいない、私は神だ」
普通なら初めて会った人に神と言えば頭がおかしいと思われるだろう。だが本当に自分が神だと信じて疑わないのかエネルと名乗った男は当然の事の様に言ってのける。
この男の言ってる事が冗談では無く本当の事なら今回の敵の親玉は目の前の男──エネルだ。
『…まァ貴方が神とか興味無いわ、御用件は何?』
「ヤハハ、気の強い女だな。用事ほどではないがちょっとした気まぐれだ…私の攻撃を受けて生きていた女は初めてだからな」
まるで人を見定めるかの様にジロリと見てくるエネルにユナは嫌気がさした。
だがこれはまたとないチャンスだ、エネルにとっては気まぐれで来たのだろうが此方としては出向く手間が省けたというもの。
今ここでエネルを倒せば少なくともルフィ達がこれ以上傷付くことは無い…ユナの瞳が僅かに煌めく。
「──ふむ、その好戦的な目、嫌いではないぞ…どうだ? 私と一緒に来ないか?」
『──は?』
突拍子も無いエネルの誘いにユナは思わず目が点になる。
どうやらエネルは”フェアリーヴァース(限りない大地)”に還幸するのが目的らしく、その為に空島の全ての人間を空から引きずり下ろすと言う。