第16章 神の国
滝を抜けた麦わらの一味は島の近くへとメリー号を進めると停止させる、浅瀬のここなら降りても溺れる心配も無いだろう。
「うっひょ〜〜ォ‼︎ すっげェ‼︎ おいユナ! 一緒に行こ──」
『あ、あー! 私部屋に忘れ物したから取りに行ってくる! 悪いけどルフィ先に行ってて!』
「…そうか分かった、先行くな!」
『うん』
ハイテンションで雲海に飛び降りたルフィはウソップとチョッパーと一緒に一目散にビーチへと駆けて行った…その姿を見送ったところでユナはため息を一つ吐く。先程口論になった相手にここまで普通に接されると逆に居心地が悪い、ルフィは気にしてないみたいだがユナはそうはいかなかった。
ユナは再びため息を吐いた。
「…あんたなんか悩んでるでしょ」
『え…』
「あいつは気付いてないでしょうけどさっきの言い訳はワザとらしいわよ…それにさっきからため息ばっか」
ナミに指摘されてユナは言い淀む、それを見て今度はナミが態とらしくため息を吐いた。
「まァ無理には聞かないけどこれだけは言っとくわ…ルフィ相手に悩んでもこっちが損するだけよ」
「そうだな、あいつは考え無しだから悩むだけ無駄だぞ」
「そうだよユナちゃん、あんなアホ船長なんて気にする事ないよ」
ナミに続いて錨を降ろそうとしていたゾロと、これから降りようとしていたサンジとが口を挟んだ。どうやら此処にいるメンバーには先程のやり取りでユナがルフィを避けているのがバレバレの様で、それぞれが気に掛けてくれた。
三人の言葉にユナは苦笑いした。仮にもルフィは船長の肩書きを持つと言うのに仲間からは酷い言われ様だ。でもそれが何だか懐かしい、自分が初めて乗った海賊船もこんな感じだったなと…決して船長をバカにしてるんじゃなく、此処ぞと言う時は必ず頼りになり信頼しているから言える事なのだと知っている。
だから麦わらの一味の絆もきっと堅いのだろう…ユナは少し羨ましくなった。