Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第36章 第36章 僕達の引越し協奏曲
「あー、ごめんごめん、そういうことじゃなくてな…」
一頻り笑って、目尻に溜まった涙を指で拭いながら、城島先輩がゆっくりと身体を起こす。
見た感じは、とても病人にほ見えないけど、身体を動かすのが少し辛そうにもみえる。
「あのな、智ちゃんにお願いしたいのは、〝俺〟やなくて〝俺の息子〟のことでな…」
「息子…さん?」
確か一昨年だっけ…、結婚したとかなんとか聞いたような聞いてないような…
「実はな、櫻井は知ってるとは思うけど、うちの嫁、赤ん坊産んでからすぐ逝ってもうてな…」
「え…?」
そんな話し、一個も聞いてない。
だからかな、胸の奥がキュッと痛くなる。
「おまけに俺もこんなだし…。それで、自分勝手な話しかもしれないんだけど、智ちゃん達に頼めないかと思ってな」
「あ、あの、良く意味が分かんないんだけど、でも、元気になったら…」
同意を求めようと、すぐ横にいる翔くんを振り返ると、翔くんは静かに首を横に振っていて…
その様子から、僕はどうして城島先輩がこんな話をしているのか、全てを察した。
「俺も嫁も、元々親を早くに亡くしててな…。親戚もいるにはいるけど、殆ど顔も合わせたことないし…。そんなとこに、俺らの子供は託せないと思って…」
気持ちは分からなくもないけど、でも…