Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第36章 第36章 僕達の引越し協奏曲
「ね、ねぇ、どうしちゃったの?」
僕が翔くんの腕を引っ張ると、翔くんはちょっとだけ寂しそうに笑ってから、眠っている城島先輩の耳元に口を寄せた。
「先輩、智、連れて来ましたよ」
え、ぼ…く?
なんで?
だって、いくら面識ごあるって言っても、僕が城島先輩から呼ばれる理由ほ、無いと思うんだけど…
「ん? あ、あぁ…、智ちゃんか…」
翔きこんの呼びかけに、ゆっくりと瞼を持ち上げた城島先輩が、僕を見てニコッと笑う。
「あ、あ、あの…」
戸惑う僕の背中を、翔くんにそっと押され、城島先輩のすぐ側まで近寄ると、僕は差し出された城島先輩の手を握った。
「智ちゃんに頼みがあるんや…」
「ぼ、ぼ、僕に…ですか?」
首を傾げた僕に、城島先輩がコクリと頷く。
「えと…、頼みって…?」
僕に出来ることなんだろうか…?
「あのな、お母ちゃんになってくれへんか?」
「へ、へ…?」
お母ちゃん…って、え、どういうこと?
だって僕、男の子だよ?
「あ、あの、それは、城島さん…の、ですか?」
この状況だから、冗談を言ってるとは思えないけど、ほら、城島先輩も関西人だから…
「む、無理です、城島さんのお母さんに、僕がなるなんて…」
それでも真剣に答えた僕に、翔くんと城島先輩が顔を見合わせ、プッと吹き出した。